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エマ通信

2016.01.30

エマ通信2月号(2016年 創刊92号)

「お水の機嫌」

列島が寒気に震えた先日、
ここエマでもお客様の足並みは途絶えがちでしたが、
その分、馴染みのお客様とはじっくりお喋りを愉しめました。
その時に何気に投げかけられた質問。
「お店始めてから何杯位コーヒー淹れました?」
あんまり考えた事無かったけれど、
一日30杯淹れたとして、
30杯×300日×10年、
ざっとまぁ、9万杯位は淹れた計算になるのでしょうか。

来る日も来る日も珈琲を淹れ続けて、
不思議に思うことがあります。

全く同じ豆を全く同じ手順で淹れたのに、
昨日と今日とで味がガラッと変わることがあるのです。

そんな時、マスターは「お水の機嫌だ」と思うのです。
今、大阪の水は高度浄化処理の施された
ハイクオリティな水となっています。
しかし果たして、
この水道水っていつもいつも同質の水が来ているのだろうか?
と、そんな疑問を持つこと、皆さんはおありですか?
マスターはいつも気掛かりです。
やはり季節や、あるいは原水の水質の日変化に応じて、
水処理の仕方には当然違いがあるのだろうと。
ミネラル分の含有量、
消毒薬の残留量、
pH値のぶれ等、
違って当然だろうと考えます。
その水質の微妙な日変化が
珈琲の味にも影響を与えているのではないか、
と思われるのです。

時折、どんなに淹れ方を凝らしても、
気になる雑味が珈琲から抜けないことがあります。
方や、どんな淹れ方をしても
得も言われぬ円やかな味わいが
カップを満たしてくれることもあります。

列島の凍えた先日は、
珈琲の味わいが限りなく穏やかでした。
お水の機嫌がいいんだなと感じます。
その要因のひとつが、今回の気候の急変ではないのか、
とマスターには思えるのです。

特に、「雪」という要因。

雪の降る仕組みを詳しくは知りませんが、
空の高みで冷気に触れた水が、
結晶となって舞い落ちたものなのでしょうか。
昔、人体に一番良いのが雪解け水だと聞いたことがあります。
マスターのイメージとしては、
自然界で一番無垢な水、それが雪なのかなと感じます。
天の無垢水=雪 。

自然界の絶対的な掟、それは、
生命の活動には水が不可欠と言う事実。
すなわち水は、生命の源。
地球は、水の惑星。
そう言えば、ホメオパシーという医療分野では、
水は一番の記憶媒体であり、
自然治癒力を高める性質を備えた一番の薬だそうです。

だとすれば、雪の本質は浄化力なのかもしれない。

確かに、降り積む雪には、
穢れを知らぬ純白の世界のイメージがあります。

しんしんと天下る真白き雪の降り積む夜に、
この地の喧騒が一時凍てついて、
その雪の結晶が浄化を呼び覚ます。

珈琲屋としては、いつもそんな水で
珈琲を淹れたいものです。

水。それは生命のふるさと。
水を大事にする事は、命を尊ぶこと。
考えてみれば、水の滴が
空を森を川を海を循環して、
生物の活動を支え、
結果、地球を満たします。
今日ドリップに落とす一滴の水が珈琲となって
お客様の胃を心を満たし
いずれまた巡り巡って地球を満たす。
ですから、ドリップする時のマスターのおまじないは、
一滴一滴の水に「ありがとう」。

幸(さき)わう大和の国の最高の言霊、
「ありがとう」。

今日もまた喧騒の街角で、
ぶつぶつとおまじないを呟きながら、
一杯の珈琲と向き合うマスターなのでした。

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