2013年 9月 10日

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珈琲の抽出に興味津津のお客様がたまにいらっしゃって、
マスターが珈琲をドリップする様子を
カウンター越しに食い入るように眺めておられます。
そして、珈琲にお湯を刺す時の豆の膨らみを見て
「珈琲ってこんなにも膨らむものなんですね。流石ですね。」と、
しきりに感心なさいます。
そこでマスターはこう応えます。
「この膨らみのカラクリをお教えしましょうか(ニヤリ)?」と。
「そう、この中には実はある魔法の粉が…」
なんて軽口飛ばしながら、お答えします、豆が膨らむ本当の理由。

「焙煎して間がない新鮮な豆(目安として焙煎後3週間以内)で、
しかも粉に挽いたばかりの(粉砕したての)豆を使えば、
誰がドリップしようとも必ず膨らみます。
その条件さえ守られていれば、種も仕掛けもありませんよ」。

ドリップの熟練者であろうとなかろうと、
古い豆を使えば、この膨らみは全く期待出来ないのです。

この膨らみの正体は、焙煎という熱反応の過程で生じる
焙煎豆の中に閉じ込められている炭酸ガスなのです。
ガスですから当然、より広い世界に飛び出そうと
常にムズムズしている訳です。
従って、時間の経過と共に徐々にガスは抜けてしまいます。
そして一度豆を粉砕してしまえば、一気にそのガスは放出されてしまいます。
しかも珈琲の命とも言えるあの馥郁な香りと共に;_;

ですから、珈琲屋は切なる思いで皆様にお願いするのです。
「コーヒーミルを買って下さい!」と。

よく粉に挽かれた珈琲豆が、1年もの賞味期限が付けられて
平気で店頭に並んでいるのを見かけますが、
珈琲屋としては、胸が張り裂ける程痛みます。
あり得ん(>_<)と。 珈琲は生鮮食品であると言う認識の欠如した デリカシーの欠片もないパッケージ商品。 もう一度、言わせて下さい。 「珈琲は生鮮食品です。 その寿命は、豆の状態でせいぜい1ヶ月、 粉にしてしまえば、せいぜい1週間が限界です。」 珈琲で胸焼けするとか、 気分が悪くなるとか、 味が酸っぱいとか、 これらの原因は、焙煎豆の鮮度の問題が疑われます。 さて、珈琲をドリップする時の あのふくよかな膨らみを毎度眺めながら、 珈琲の抽出の極意とは、つまり、 この泡の膨らみとの対話なのかなと思わされます。 「美味しい珈琲の淹れ方」と題して、 巷では書籍や教室が溢れています。 温度は○度で、 注湯は○回で、 のノ字を描きながら、 ○分以内で、云々。 どのメソッドもごもっともで、 難癖を付けるつもりもありませんし、 最低限の基本というものは勿論必要です。 その基本のメソッドを踏まえた上で、更にその先には、 まだまだ開拓すべき領域が広がっていることも 忘れてはいけないと思っています。 注ぐ湯の一雫が、 渦を作り空気の流れを呼び込み、 それが契機となって 珈琲の息遣いが始まる。 注ぐ雫は染み入りながら、 数多の息吹を身に纏い、 凝縮された一滴となって 割賦を満たす。 願わくば、 その一杯の珈琲が、 その人を満たしますよう。 20130910-183641.jpg