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エマ通信

2016.09.03

沈思黙考

「死は忌み事か?」

父の骸(むくろ)を前にして、
そんな事を考える。

生まれて、生きて、
いつしか必ず死に至るのが人生。
その定めの中で、
ならば、人が生きる目的とは何なのか?
言葉で言えば、
その答えは単純にして明快。

「人生は幸福になる為にある」。

ところが人は死んだ時、
「不幸があった」と言う。

「死=不幸」、と。

そして死こそが
人生の結末であるとすれば、
いずれ死に至る全ての人間は、
「不幸」に向かって生きていることに
なってしまう。
人生はハナっから負け戦が定められていると言うのか?

そんな馬鹿な話は絶対に無い。
詭弁に弄されてはいけない。

死は本来美しいものである、
と考える。

植物は芽生え、伸長し、花を咲かせ、
実をつけ、種となって、新たに巡る。

命は、芽生えと伸長と終焉の過程を繰り返し
巡り続ける。

だから、死の本義は、申し送りにある。

此の度の父の葬儀に際しては、
古い付き合いのある方々が、
父との思い出を口々に語って下さった。

そんな話を聞きながら、
やはり偲ばれるのは、
優しくて真面目で
お人好しだった父の人柄。
誰からも好かれるその人となり。

私はそんな父から何を受け取り
何を遺して行けるのか。

「人生は幸せになる為に
与えられた尊い時間」。

原野を身ひとつで開拓した父の汗。
子の行く末を思い島を出た父の決断。
慣れない土地、慣れない言葉、
異郷での人付き合いの中で
流したであろう父の涙。
その全ての父の奮闘があって、
私は育まれてきたのです。

だから何があろうとも
父に恥じないように生きるのが私の使命。

父の死に直面しながら、
この父は懸命に美しく天寿を全うしたと
思うのです。

私は、幸せに向かって懸命に流し続けた
父の尊い血と汗と涙を受け継ぐ者となり、

そして真の意味での幸せを掴むのだ。
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