二十歳の頃の僕自身へ
「二十歳の頃の僕自身へ」
人の心に住まう三つの働きは、知・情・意です。
知は真理を探究し、情は美に浸るを求め、意は善を実現したがるものです。
すなわち知・情・意には、
それぞれ真・美・善の価値追求が呼応します。
けれど人の心の奥深くには、更にたゆたう情動があります。実はそれがとても重要で、それを愛と呼ぶのです。
その愛は、為に生きようとする情動であり、
喜びを共に分かとうと希求する抑え難い情的衝動です。
それは限りなく自己という観念の希薄なところでもあります。
その情動の根源にこそ神性や仏性を見い出せるとも言えましょう。
そんな愛の情動に基づいて、真理を知的に探究すればそこには真の科学と哲学が立ち上がることでしょう。
深い愛に根ざした美の刺激を情的に表現し得るなら、それこそが至高の芸術となって、人は多幸に酔いしれることでしょう。
真の愛を擁する正義公正に基づきそれを意的に振る舞うならば、
そこに人としての本当の生きる規範が示されます。
それこそが真の倫理道徳であり、政治も経済も技術も本来はそんな人の道に則って運用されるべき社会制度であり資産であるべきです。
知情意の働きが愛の情動を基盤に発動されてこそ、
世の中は正しい方向へと舵を切れるのです。
若い皆さんにとって以上のお話はとても古典的かもしれませんが、しかし私自身は普遍的な理解であると認識しております。
これからは若い皆さんの愛の感性でより豊かな世の中を目指して下さい。
結局、私の心情と考え方と生活を一致させること。
その方向へとブレなく生きる努力をたゆみなく積み上げること。
世の中を皆さんと共に思いと言葉と暮らしや態度で明るく照らして参りましょう。
…などと、大人はとかく結論めいたことを語りたがるが、
憶えておくべきことは、
「すべての瞬間が結論であり始まりである」ということであって、
決して結論の押し付けになってはいけない。
「結論は始まり」と言う、
無限の演繹を愉しむのだ。