綿のような雲
旅先で、日々の暮らしの中で、
私が関わる全ての対象が私に寄越すその刺激に促されて
私の心に浮かび上がる情的な質感をくみ取る時、
「旅情」、「抒情」、「人情」、
人はそんな言葉を充てながら感動を胸に留(とど)めようとする。
旅情も抒情も人情も、みんな「情」。
もちろん人生には、お金も地位も名誉も仕事も自由になる時間も必要だけど、
本当は人生で一番大切なものは「情(なさけ)」なのだと、齢を重ねるごとに思うこの頃。
人は情け、世は情け。それでいい。
今時のAIがどんなにか優れていようと、
今日の青い空に綿のような白い雲を見つめていれば、
そんなことはもうどうでも良くって、
その情けひとつで十分今日を締めくくられるさ。