10月は葡萄のケーキから 梶井は檸檬の溌剌さに思考を惑わされ丸善を爆破する妄想に嵌りやがったが、 俺は葡萄の藍に深い静謐を感得して心を律するを学ぶ。 昔は結核やら何やら、身体の病弊から精神を蝕むことさえも文学として高級に仕立て上げたが、 俺は健全な肉体に基づいて心を養うを索(あなぐ)る。 更けゆく秋には秋の味わいを糺しく織り込んだ食を頂いて善き思索の地平へと踏み出すのだ。 今日の『葡萄のケーキ』の美味なることよ。