ワインディングロード
「この手のケロイドはね、子供の頃の霜焼けの名残りなんよ」。
その人の霜焼けは骨がさらけるほど酷かったらしく、
両手両足を包帯でぐるぐる巻きにされて、毎日乳母車で押されて、教室ではノートを取ることもママならなかったが、それでも毎日学校へは欠かさず通ったという。
そんな日々を3年ほど過ごした結果、試験なんか誰が書いてやるものかとその意地から回答用紙の白紙提出を中学を終えるまで貫いて、結果、高校へは上がれず、求職した会社にも試験があって勿論白紙で提出して不合格となり、
已む無く親族の営む縫製会社に拾ってもらい、無口で人嫌い、口にする言葉は文句だけという青春時代を過ごし来たそうな。
そんなこの人のお母さんが、この子には何か信仰を持たさなければえらいことになると心配して方々連れ回ったらしいが、神仏何ぞに勿論心を開かず、お布施なんかドブに落ちた1円でさえしてたまるかと罵る始末。
そんなこの人が、熱心なキリストの伝道師となって60年。今や傘寿の齢を過ぎて、いまだ欠かさず通って下さる。
今日、その方の問わず語りに耳を傾けながら、
どんな人にも人生の曲がりくねった道行きにとっておきの物語りが潜むことを思う。
その方の根に張る徹底したその強情さにも神の愛。その縁(えにし)に導かれし人生は、やはりしあわせであったことであろう。
私も主を賛美致します。