知人の訃報
今日は、抜けるような青空です。
今週は雨が続くとの予報であったと記憶するのだが、マスターの勘違いか、この晴れ間は想像だにしなかった。
実は、先週末に知人の訃報を受けとった。
その知人の奥様は、8年前に他界しており、以来、彼は残された幼い子供たち三人を男手ひとつで今日まで育ててきた、実に偉い男なのである。
彼の場合は、大手パン屋の配送業務担当であったから、昼夜を問わない激務であったはずで、なんのお洒落っ気もない彼の風貌からして、なりふり構わず働き通したのだろう。
あれは何年前だったか。一度何の前触れなくふらりとエマを訪ねてくれたことがあった。
他愛もない雑談を交わして最後になって彼が聞いてきたことが、「ところでマスターはどこで散髪してますか?マスターだったらお洒落な散髪屋に行っているんじゃないかと思って」、との質問。
その時は私の行き付けの理髪店の情報を伝えはしたが、その後彼がその店に行ったかまでは知らない。
彼の訃報に触れ今思い出す他愛もなかったこの会話。でもきっと、その時の彼の来訪の一番の目的がそれだったように思えてならない。
さて、その時の彼にあったお洒落をするに駆られた事情とは何だったのか?
今となってはマスターには計りようもないが、子供達にはもしかしたら思い当たることがあるかも知れない。
それは一番下の娘さんのことであったり、長男、次男の諸々に関わるものだったかもしれないのだが、いずれにせよきっと子供らに絡む何かであったに間違いあるまい。
母を失って8年間の子供らとの歳月には並々ならぬ労苦があったことであろう。
こちらが話しかけることにいつも言葉数少なく照れや苦笑いで答えていた温厚で善良で純心でロマンチストで出過ぎることの一切なかった優しい君。
頑強そうな体軀に見えたのに、突発性の難病に見舞われるなんて、そんなこと誰が想像出来たろう。
きっと本人が一番驚いている。
この8年の間に子供らは実に成長を遂げたものだ。
上の子は大学生となり今二十歳だ。
次男はこの春から就職して、職場ではとても可愛がられている様子。
長女は高校2年生となり、すらりと背が伸びて気品を兼ね備えた美しい娘さんになっていた。
ほぼ8年ぶりに会った子供らの見違えるほどの成長ぶりには圧倒される。
私たち夫婦にとって、君たちのお父さんお母さんとのご縁はかけがえのないものです。
なぜ巡り会えたのか。それらはすべて神様の采配によるもの。
だから僕たちはいつまでも君たちを見守る。
みんな素直な良い子たち。
君たちのご両親がそうであったように、神様への祈りと愛を持って君たちと付き合い続けたいと思う。
これからもよろしくお願いする。
今日、無事に葬儀を終えて、晴れ上がった空に両手をしっかりと合わせた。