エマ通信3月号<後>
3月8日(木)
さて、「人間は、味わう存在である」とすれば、ではなぜ味わう必要があるのでしょうか。
味わうと言った場合、
好ましいものもあれば、
そうでないものもあったりと、
喜怒哀楽を悲喜こもごもに体験するのが人生であり、
そのいろんな悲喜こもごもを味わうという点において、
人はみな平等であるということも言えます。
老若男女、貧富、地位に関係なく、人は皆、
平等に人生の辛酸辛苦を味わいながら、日々を過ごしているのではないでしょうか。
なぜこのように世界は億万の情的味わいで満ちているのか。
思うにそれは、他者と共感共鳴するためではないでしょうか。
私という存在は、物理的には私という体の脳内に閉じ込められて
一歩も外へは踏み出せない、
絶望的な孤独の中に留め置かれた存在ではあるけれど、
他者と共通の味わいを分かつことで、
共感共鳴し孤独をいやし合うことが可能になる。
共感共鳴する目的、それは「ひとつになること」。
そう考えると、昨年の大震災は、痛恨の出来事ではあったけれど、
皆が、共通に味わい、共鳴し、そしてひとつに結び合う絆の尊さを学び得たとすれば、
それも人類全体の成長を手助けるものとして、
大きな成果をもたらす出来事であった、とも言えるのではないでしょうか。
この「味わう」という感性において人は、
他の生物よりも群を抜いた存在として、この地球上に君臨しています。
「情的味わい」こそが、文化文明発展の原動力とも言えるのではないでしょうか。
ですから、人は先ず美意識を育てるべし、と思うのです。
子供たちに美の味わいをと。
最後に、素敵な詩の味わいをお届けいたします。
童謡「ぞうさん」の作詞で知られる、まどみちおさんの作品です。
タイトルは「臨終」。
神さま
私という耳かきに
海を
一どだけ掬わせてくださいまして
ありがとうございました
海、
きれいでした
この一滴の
夕焼けを
だいじにだいじに
お届けにまいります