喫茶去
喫茶去の心
有名な禅語に「喫茶去(きっさこ)」という言葉があります。
「まぁまぁ、お茶でも一服どうぞ」というくらいの意味なのですが
これが禅語というだけあって、その世界観には深いものがあります。
喫茶店をやっていると、誰や彼やと色々な方が訪れて下さいます。
初めてのお客様、常連さま、様々な職種、風貌のかたetc…。
この世の中は、千差万別の個性豊かな人々であふれています。
そんなお一人おひとりとご縁をいただく場のひとつとして
私どもの喫茶店もございます。
さて、お客様をお迎えする立場として
こんな人は、あんな人は、とやはり人間ですから
より好みの心が生じるものです。
果たして、万人に対して変わらぬ心情で、変わらぬおもてなしを
ご提供するという、喫茶店の使命を存分に果たすことができるだろうか…。
喫茶店といえども、人としての心構えが
常に問われているわけです。
僕の好きな言葉に
「歩み入る者に安らぎを、去りゆく人にしあわせを」
というものがあります。
これは、とあるお座敷にかかげられていた言葉です。
この言葉のポイントは、歩み入る「者」が、去りゆく「人」にと
「者」から「人」へと変容するところにあると思います。
迎え入れた見ず知らずの「者」と、時間と空間をひと時共有し合ったあとに
親しみや愛おしさといった心情が芽生えるなら
おのずとその人の後ろ姿に手を合わせることが出来ると思います。
その瞬間、その「者」は互いにわたしにとってのかけがいのない「人」となる。
皆さんと時間と空間を共有する佳き場として
私共の喫茶店がその役割を果たせるようにと願う次第です。
喫茶去笑間として…。