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エマ通信

2017.11.14

喫茶店でのこもごも

喫茶店をやってますとその方の名前や素性などは
ほとんど知らないのだけれど、
なんだか気心の触れ合う方がいらっしゃいます。
そんな方は何度かご来店頂くうちに
店の風景に溶け込んでしまいます。

その方は、いつも物静かにじっくりと珈琲を味わって下さいました。
決してお喋りではなく、
でも繰り出す話題には洗練された趣味性が伺えて
知的な刺激をいつも感じていました。
ロードバイクのことから冬山登山の話、パソコンにも相当知識がおありでした。
その方の体調が急に芳しくなくなったのは丁度1年程前のこと。
来店の頻度が少しづつ減って行きこの8月を最後に暫くお顔を見ませんでした。
そしてつい先日、初めて見る女性のお客様が見えられました。
その方は片隅で物静かに珈琲をたしなまれていらっしゃいました。
他のお客様が引けた時に、
こちらは珈琲豆も販売されてますか?と聞かれて、
簡単なやり取りをしていると
その方が突然堪えきれずに
涙を零されました。
事情が飲み込めないままに、
いろいろお辛いことがあったのですねとマスター。
しばしの沈黙があって後、押し殺すような小声でようやっと、
兄がたいへんお世話になりまして、
と仰いました。
事情が一瞬にして氷解しました。
あの方が亡くなったんだ…。

こちらのお店のことは兄からよく聞かされておりまして、
一度お邪魔しようと思っておりました。
ここで寛いでいたのかと思うとなんだか泣けてきまして…、と。

地味だけど限りなく善良で優しいその方のお人柄が偲ばれます。

この場所をしばしの心の拠り所としてくださったのであれば、
この上なく光栄なことです。
◯◯さんの生きた証としての一風景がこの場所にあることを光栄に思います。

兄がお世話になった方々へ笑間の珈琲豆を送りたいという
たいへん光栄なお申し出をたまわりました。
ありがとうございます。
勿論お兄さんにいつもお出ししていた珈琲をご用意致します。

ご冥福をお祈り致します。
合掌