ゼロ場
それもまたほんの一瞬の出来事。
そこにいないと出会うことが出来ない風景がある。
珈琲には、リラックス効果があると言う。
香りを嗅いだ瞬間の脳波にα波が検出されるらしい。
それがどの程度のα波かは知らないが、
果たしてそれは、青空を見上げた時よりも効果は高いのか?
冬の凛とした空気に浸る時の静けさよりも心が落ち着くものか?
リラックスするとはリセットすること。
なのでマスターは、基本「ゼロ場」を探す。
「ゼロ場=すべてが生まれ、すべてが帰る所」と、マスターは定義する。
そんな大仰なこと言わなくたって、ゼロ場はそこかしこに在る。
陽だまりに映る草の影。
生駒の山並みの静けさ。
曇りの日の南天の朱い実。
晩秋の古寺の大銀杏。
神社の水盤に煌めく光。
野焼きの匂い。
すなわちそれは、美しさに触れること。
いたってシンプル。
いつだって今この時にしか出会えないとっておきの美が私を取り巻く。