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エマ通信

2013.08.21

「風立ちぬ」

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ジブリ映画、「風立ちぬ」。

この映画に関して、賛否が渦巻いている、
と聞きました。
マスターも先日、ママと二人して
鑑賞してきました。
そして、マスターの感想はすこぶるシンプルです。

余韻の深い、美しい作品だ、と。

飛行機に憧れる主人公堀越二郎が少年時代に見た
イタリアの飛行機技師カプローニ伯爵との
出会いの夢。
全てはそこから始まります。
そして、目覚めたあと、母親にこう宣言します。

「お母様、僕は美しい飛行機を作ります」、と。

対する母親の言葉がイカしていて、
余計な言葉は一切挟まず、

「そうなの。しっかりやって御覧なさい」

とだけ答えます。
それ以来、主人公は寝ても覚めても

「美しい飛行機を作る」

と言う夢を追い続けます。

貧乏学生時代には、サバの味噌煮定食を
馬鹿の一つ覚えのように食べ続けながら、
サバの骨の曲線美を
如何に飛行機の骨組みに活かそうかと
思案に暮れる程の没頭ぶりでした。

そして、ついに飛行機技師としての職を得ます。
ところがその時、時代は折しも富国強兵。

当時飛行機は、新しい火力(武器)として、
軍事的な機能の向上が求められていました。
ですから、二郎も否応無しにそう言った方向に
加担せざるを得ない状況を生きます。
しかしそんな状況にあっても、
常に二郎の胸の内にあった思いは、

「飛行機は美しい夢。
自分はその夢に形を与えるんだ」

と言う揺るがざる信念です。

この「美」を探求する想いの強さ、深さ、
その純度の高さ、
それこそが、二郎の人生を形作る上での核心となっており、
この作品の根幹を占める重要なテーマである、と思います。

その二郎の純真な想いが、儚くも美しい
里見菜穂子との恋を引き寄せたのだと、
マスターには思えるのです。

菜穂子は、結核を患い
自分の命が長くないことをよく分かっている立場です。
二人に残された時間が限られている中、
二郎の上司夫妻の仲人の下、誰の参列も無い中、
結婚式を挙げます。
この時の上司夫妻の口上がとても良かった。
結婚とは本来、
第三者の執り成しを必ず得るべきものであると
思わされる場面でした。
でなければ、天に繋がらないと。
結婚とは本来天の公認が必要で、
二人の好き勝手だけでは認められないもの、
なのではないでしょうか。
そういう意味でも、
信頼の置ける人生の先輩が居てくれた二人は、
幸せでした。
この上司の役割はとても大きなものであったと思います。

「少年よ、まだ風は吹いているか?」

全編を通じて何度も投げ掛けられるこの言葉はきっと、
監督の宮崎駿自身に向けられた言葉でもあり、
この映画を観る人の心に
深い余韻を残すフレーズとなっていると思いました。

究極、人生とは、愛と美の循環である。
そんなことも感じさせられました。
欲得を超えたところで、
純真に己の美学に邁進する生き方。
それが二郎に一貫した生きる姿です。
そこに清々しい共感を覚えます。

私事ではありますが、
マスターもまた、
一杯に込める珈琲と言う名の美学を
追い求めているつもりです。

美の創造こそが人生の醍醐味です。
それを達成するための基本は、
自分の人生の現実を受け容れること。
但し、無理矢理、嫌嫌では無く、
愛や感謝の思いで受け止められるよう。

そんなことを思いながら、
深い余韻に浸った秀作でした。

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